教育訓練休暇給付金は、2025年10月1日に新設されたばかりの制度です。会社を辞めずに、無給の休暇を取ってまとまった時間で学ぶ人を対象にした給付金で、プログラミングスクールの転職コースとも相性のよい制度です。この記事では、対象条件・支給額の決まり方・申請の流れを、厚生労働省の公表資料に沿って整理しました(2026年9月確認)。
教育訓練休暇給付金とは
会社を辞めずに、教育訓練のための無給の休暇を取って学ぶ人を対象に、離職した場合の基本手当(いわゆる失業手当)と同額が支給される制度です。「仕事を辞めてスクールに通うか、働きながら夜間に学ぶか」という二択しかなかったところに、第三の選択肢ができた形です。2025年10月1日に施行されたばかりの新しい制度で、まだ活用事例や解説記事が少ない分野です。
対象になる休暇の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 2025年10月1日 |
| 対象になる休暇 | 連続30日以上の無給休暇。就業規則等に基づく制度で、本人の申し出と事業主の承認が必要 |
| 雇用保険の加入期間 | 5年以上(原則、休暇開始前2年間に被保険者期間12ヶ月以上) |
| 支給額 | 基本手当と同額(2026年8月1日以降は日額2,562〜9,110円の範囲で、年齢と賃金により決定) |
| 給付日数 | 加入5年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日 |
| 受給期間 | 休暇開始から1年以内(特定の事由があれば最長4年) |
最も重要な条件は「無給」の休暇であることです。有給休暇として取得した場合はこの制度の対象外になります。また、勤務先に教育訓練休暇の制度が就業規則等で整備されていないと使えません。制度がなければ、まず会社にこの制度の導入を相談することから始める必要があります。
支給要件をもう一段掘り下げる
「雇用保険の加入期間5年以上」という条件は、厚生労働省の業務取扱要領上、次の2つの期間で判定されます。
- みなし被保険者期間。教育訓練休暇開始日の前日を基準に遡って2年間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1か月として数え、合計12か月以上あること
- 算定基礎期間。同一の事業主に引き続き雇用された期間が、休暇開始日の前日時点で通算5年以上あること
この算定基礎期間の長さによって、後述する給付日数(90日・120日・150日)が決まります。転職して間もない場合でも、以前に他の事業所で被保険者だった期間も通算される場合があります(前の事業所を離れてから1年を超えて空いている場合や、前の離職で基本手当などを受けた場合は、その離職日以前の期間は通算されません)。条件があるため、5年に届かないと自己判断する前にハローワークで確認する価値があります。
疾病・負傷や事業所の休業、出産、育児休業給付を受けていた期間などやむを得ない理由で30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間がある場合、みなし被保険者期間の算定に用いる2年間を最大4年間まで遡って延ばせる緩和措置がある(厚生労働省「教育訓練休暇給付金に係る業務取扱要領」56713参照)。
支給額はどう決まるか
教育訓練休暇給付金の日額は、離職時の基本手当と同じ計算方法で決定されます。教育訓練休暇開始日の前日から遡った直近6か月の賃金総額を180で割って賃金日額を算定し、そこに年齢区分ごとの給付率(逓減率)を掛けて休暇給付金の日額が決まる仕組みです。2026年8月1日以降は日額2,562〜9,110円の範囲におさまり(上限額は30歳未満7,450円、30歳以上45歳未満8,270円、45歳以上60歳未満9,110円、60歳以上65歳未満7,830円。厚生労働省の2026年7月31日公表資料による。2026年7月までは2,411〜8,870円でした)、賃金水準が低いほど給付率は高く、逆に賃金水準が高いほど給付率は低くなります。この上限額・下限額は毎年8月1日に自動改定されます。
支給額は、この日額に「認定を受けた休暇取得日数」を掛けた額です。認定は休暇開始日から30日ごとに区切られた期間ごとに行われ、教育訓練休暇取得認定申告書をハローワークに提出して、直前30日分の休暇取得日について認定を受ける、という流れを休暇終了まで繰り返します。基本手当の失業認定に近い仕組みですが、公共職業安定所への出頭は必須ではなく、郵送等での提出も認められています。学習に集中したい期間に窓口へ通う手間がかからないのは、目立たないもののありがたい作りです。
他の休業系給付金との違い
教育訓練休暇給付金は、育児休業給付金や介護休業給付金と枠組みが似ていますが、対象となる休業の性質と給付率が異なります。
| 制度 | 対象となる休業・休暇 | 給付率の目安 | 上限日数 |
|---|---|---|---|
| 教育訓練休暇給付金 | 職業訓練のための無給休暇(連続30日以上) | 基本手当と同様の逓減率 | 90〜150日(加入期間により決定) |
| 育児休業給付金 | 子の養育のための休業 | 最初の180日は67%、以降は50% | 原則子が1歳(延長時は2歳)まで |
| 介護休業給付金 | 家族の介護のための休業 | 67% | 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割可 |
教育訓練休暇給付金は、育児や介護のように休業の事由が生じるのを待つ制度ではなく、本人が希望する時期に自発的に取得を申し出る点が特徴です。自分で時期を選べるということは、仕事の繁忙期を避けて計画できるということでもあり、職場との関係を保ちながら学びたい人には扱いやすい性質です。ただし、対象教育訓練休暇の期間と育児休業・介護休業の期間が重なる日については、教育訓練休暇給付金は支給されません。専門実践教育訓練給付金(受講料の補助)や教育訓練支援給付金(離職者向けの生活費補助)は、この制度と対象者・目的が異なるため、それぞれ別の記事で詳しく整理しています。
対象となる教育訓練の範囲
厚生労働省の業務取扱要領では、対象教育訓練休暇として認められる訓練を、原則として次の2類型に整理しています。
- 学校教育法に基づく大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練
- 教育訓練給付金(専門実践・特定一般・一般)の講座指定を受けた教育訓練実施者が行う教育訓練
プログラミングスクールの転職コースがこの制度の対象になるのは、原則として2の「教育訓練給付金の指定講座」に該当する場合です。厚生労働大臣の指定を受けていない独自の短期講座は、この2類型に直接は当てはまりません。
ただし、上記1・2のいずれにも該当しない教育訓練であっても、本人が受講の目的や内容を疎明し、住居所を管轄するハローワークの長が制度の趣旨に合致すると確認した場合は対象になり得るとされています。具体例として、司法修習、語学留学、海外大学院での修士号取得が挙げられています。プログラミングスクールの独自コースがこの個別確認の対象になるかどうかは、受講前に管轄のハローワークへ確認しておく方が確実です。
指定講座に該当するかどうかは、当サイトの給付金が使えるプログラミングスクール一覧に掲載しているスクール・コースであれば、専門実践・特定一般・一般のいずれかの教育訓練給付金の指定を受けている可能性が高いという目安になります。
申請の流れ
- 事前に事業主の承認を得る。就業規則等に基づき、休暇の目標・内容・実施方法・期間を明らかにした上で、教育訓練休暇取得確認票に事業主の証明を受けます
- 事業主が賃金月額証明書をハローワークへ提出。休暇開始日の翌日から起算して10日以内に、事業主が雇用保険被保険者教育訓練休暇開始時賃金月額証明票をハローワークへ提出し、賃金支払状況等の確認を受けます
- 本人が住所地管轄のハローワークへ支給申請。事業主から交付された証明書類と取得確認票を添えて支給申請書を提出し、受給資格決定通知を受け取ります
- 30日ごとに取得状況を申告。認定日に、教育訓練休暇取得認定申告書と受講証明書等を提出し、直前30日分の休暇取得について認定を受けます。窓口だけでなく郵送での提出も可能です
- 認定日数分の給付金が指定口座に振り込まれる
専門実践教育訓練給付金のように受講開始前の手続きが中心の制度と違い、教育訓練休暇給付金は「休暇を取る」という労務上の手続きが起点になります。会社との調整が最初のハードルになる点を理解しておく必要があります。
企業側の準備事項
この制度は、勤務先に教育訓練休暇の制度が就業規則等で整備されていることが前提条件です。企業側が対応しておく必要がある点を整理します。
- 就業規則(常時雇用する労働者が10人未満で就業規則の作成・届出義務がない事業所は、就業規則に準ずる社内規定でも可。この場合は事業主と労働組合等の労働者代表が連名で作成した申立書の添付が必要)に、業務命令によらない連続30日以上の無給休暇制度を定めること
- 休暇の使途を教育訓練に限定する必要はなく、使途を定めないサバティカル休暇のような制度でも、教育訓練のための取得であれば対象になる
- 労働者から休暇取得の申し出を受けた場合、休暇の目標・内容・実施方法・期間を明らかにした教育訓練休暇取得確認票等に承認の証明をすること
- 休暇開始日の翌日から10日以内に、賃金月額証明書等をハローワークへ提出すること
会社にとっては無給休暇を認めるだけで金銭的な負担が発生しない制度であるため、就業規則の整備さえ済めば、給付金の原資は雇用保険から支給される形になります。
会社に教育訓練休暇制度がない場合の進め方
2025年10月に始まったばかりの制度のため、就業規則に教育訓練休暇の定めがない会社はまだ多いと考えられます。制度がない場合、いきなり人事部に「休暇が欲しい」と申し出るより、次の順番で進める方がスムーズです。
- まず就業規則を確認する。教育訓練休暇に類する制度(自己啓発休暇、リフレッシュ休暇など)が既にないか確認します
- 制度化の相談を人事・総務にする。教育訓練休暇給付金という国の制度があること、無給休暇であれば会社側の金銭的負担が発生しないことを説明すると、話が進みやすくなります
- 取得したい時期・期間を具体的に伝える。「いつから何日間」を先に決めておくと、事業主側も判断しやすくなります
会社にとって無給休暇を認めるだけで済む制度であることは、交渉材料として伝えておく価値があります。ただ、会社が本当に気にするのは費用より、休んでいる間の仕事を誰が受け持つかのほうかもしれません。引き継ぎの段取りまで自分から示せると、制度の説明だけで終わるより話が前に進みやすくなります。
気をつけたい注意点
- 有給休暇として取得した場合は対象外です。無給の休暇であることが条件です
- 勤務先に教育訓練休暇の制度が就業規則等で整備されていないと使えません。制度がなければ、まず会社と相談することになります
- 休暇期間中は、原則として就業が予定されていてはいけません。休暇開始時点で就業が予定されている場合は認定を受けられず、開始後に予期しない就業が生じた場合はその就業日だけが不認定となります
- 産前産後休業を取得している間に、これを中断して対象教育訓練休暇の取得を開始することはできません
- 解雇や雇止め、休業を予定されている場合、対象教育訓練休暇を取得することはできません
- この給付を受けると、原則として休暇開始前の被保険者期間が基本手当(失業手当)の計算から除外されます。休暇後に離職した場合の失業手当に影響が出る点は、事前に理解しておく必要があります
ただし6番目の点には例外があります。休暇終了後6か月以内に倒産・解雇等により離職し、特定受給資格者等に該当した場合は、特例的に基本手当の支給を受けることができます(令和9年3月末までは、有期契約が更新されなかった特定理由離職者も対象に含まれる暫定措置があります)。休暇を取得したこと自体が、その後の望まない離職時の保障を一律に失わせるわけではありません。それでも、学んだあとに自分から転職するつもりの人にとって、休暇前の加入期間が計算から外れる点は軽く見られない条件です。今の会社を離れる予定があるなら、給付を受ける前に、その後の失業手当まで含めて損得を考えておくほうが安全です。
また、教育訓練休暇は分割取得も可能です。所定給付日数の残日数がある限り、受給期間(原則1年、最大4年)内であれば、事業主の承認を得た上で複数回に分けて休暇を取得できます。
また、趣味の講座は対象外で、職業に関する教育訓練であることも条件です。プログラミングスクールの転職コースであれば、この条件を満たしやすいと考えられます。
専門実践教育訓練給付金との組み合わせ
プログラミングスクールの転職コースは3〜6ヶ月のものが多く、教育訓練休暇給付金の「連続30日以上」という要件は満たしやすい部類です。専門実践教育訓練給付金で受講料の50〜80%を戻しつつ、休暇期間の生活費をこの制度で補うという組み合わせが、在職者にとっては最も負担の軽い進め方になります。教育訓練休暇の期間中に教育訓練給付金に係る教育訓練を受講し、教育訓練給付金の支給を受けること自体は可能とされています。ただし、専門実践教育訓練給付金の受給資格確認や訓練前キャリアコンサルティングは受講開始前に必要な手続きのため、教育訓練休暇の申し出と並行して進める必要があります。手続きの順序は当サイトの専門実践教育訓練給付金の申請手順もあわせて確認してください。
教育訓練休暇給付金に関するよくある質問
有給休暇でも使えますか
使えません。無給の休暇であることが条件です。有給休暇を使う場合は対象外になります。
会社に教育訓練休暇の制度がない場合はどうすればいいですか
この制度は勤務先に教育訓練休暇の制度が就業規則等で整備されていることが前提です。制度がない場合は、まず会社に導入を相談する必要があります。
専門実践教育訓練給付金と同時に使えますか
制度としては組み合わせて活用することが想定されています。専門実践教育訓練給付金で受講料を、教育訓練休暇給付金で休暇期間中の生活費を、それぞれ補う形です。ただし手続きの順序や条件は別々に確認する必要があります。
休暇後に会社を辞めた場合、失業手当に影響はありますか
影響があります。この給付を受けると、原則として休暇開始前の被保険者期間が基本手当(失業手当)の計算から除外されます。ただし、休暇終了後6か月以内に倒産・解雇等により離職し、特定受給資格者等に該当した場合は、特例として基本手当の支給を受けられます。休暇後に離職を検討している場合は、この点を踏まえて判断してください。
プログラミングスクールの受講にも使えますか
対象になるのは、原則として教育訓練給付金(専門実践・特定一般・一般)の指定を受けた講座です。厚生労働大臣の指定を受けていない独自コースは、本人の疎明とハローワークによる個別確認がない限り対象になりません。プログラミングスクールの転職コース(3〜6ヶ月程度)は「連続30日以上」の要件は満たしやすい部類ですが、講座自体が指定を受けているかどうかを先に確認してください。
休暇を分割して取得することはできますか
できます。所定給付日数の残日数がある限り、受給期間(原則1年、最大4年)内であれば、事業主の承認を得た上で複数回に分けて教育訓練休暇を取得することができます。回数そのものに制限はありません。
育児休業や介護休業と同時に使えますか
同じ日に重ねて使うことはできません。対象教育訓練休暇の期間中に育児休業や介護休業を取得したと認められる日については、教育訓練休暇給付金は支給されません。産前産後休業や有給休暇と重なる日についても同様です。
この制度はまだ新しいですが、実際に使えますか
2025年10月1日に施行されたばかりの制度で、活用事例はまだ多くありません。利用を検討する場合は、まず勤務先に教育訓練休暇の制度があるか、そしてハローワークで現在の取り扱いを確認することをおすすめします。
まとめ
教育訓練休暇給付金は、会社を辞めずに無給の休暇で学ぶ人のための新しい制度です。支給要件はみなし被保険者期間と算定基礎期間の2つで判定され、支給額は基本手当と同じ方法で算定した日額に認定日数を掛けて決まります。無給休暇であること、勤務先に制度が整備されていることが前提条件で、休暇後の失業手当への影響(と、その例外にあたる特例)も理解しておく必要があります。対象となる訓練の範囲は教育訓練給付金の指定講座が原則である点も、事前に確認しておきたいポイントです。専門実践教育訓練給付金と組み合わせることで、受講料と生活費の両面を補う進め方ができ、プログラミングスクールの転職コースとも相性のよい制度です。
参考:厚生労働省「教育訓練休暇給付金に係る業務取扱要領」、厚生労働省の教育訓練休暇給付金に関する公表情報(2026年9月確認)。2025年10月創設の新しい制度のため、最新の運用状況は必ずハローワークまたは厚生労働省の公式情報で確認してください。
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